予防法務
予防法務とは?
よく弁護士はトラブルになってから頼むもの、と言われます。しかし、昨今企業法務分野においてよく言われているのが、「予防法務」です。予防法務とは、企業が法的なトラブルを避けるために、もしくは仮に法的なトラブルが発生しても迅速に解決できるように、予防するための取り組み全般をいいます。
予防法務に取り組んでいれば、法的なトラブルが起こりにくくなりますし、仮に起きても解決が早い、というメリットがあります。一方、予防法務にまったく取り組んでいない場合、トラブルに対する備えがないために、トラブルは大きくなり、解決までに時間やお金がかかってしまう、ということになります。トラブルの大きさによっては、事業運営を断念せざるを得ないようなものもあり得るため、予防法務は非常に重要といえます。
予防法務の重要性
仮に予防法務に取り組んでいなかった場合、どうなるでしょうか。
たとえば、残業代について無知な状態において、固定残業代制度を導入していた場合を想定しましょう。この場合、裁判で固定残業代制度が無効となると、固定残業代として支払っていたものが、残業代計算の基礎賃金に算入されることになります。その結果、会社側が残業代だと思って支払っていた金額が認められないばかりか、基礎賃金に算入されて残業代が跳ね上がるということになり、まさに「踏んだり蹴ったり」の状態になってしまいます。
このように、法律に無知な状態で、予防をしておかないと、トラブルになった場合に取り返しの付かない状態になるのです。もちろん、「今までそんなことなかったから大丈夫」と思われる経営者の方もいらっしゃいます。しかし、それは今までなかっただけであって、これからもないという保証にはなりません。むしろ、今までなかったからこそ、今のうちに整備をすることが重要、と言えます。
具体的にどんなことをやるのか?
契約書や就業規則の整備、自社の知的財産権の管理、債権の管理、日ごろの法令遵守体制の整備、従業員に対するコンプライアンス研修などといったことが、具体的な予防法務の活動になります。一番早いのは顧問弁護士をつける、ということですが、それだけではなく、全般的に穴がないかをチェックしてもらうことが重要です。その上で、日々の意思決定において、「弁護士に聞いておこう」という意識が重要になります。これまでの意思決定に「法的リスクの検討」を加えるということです。それにより、リスクを捉えた上で、リスク回避をするのか、リスクを取ってでもやるのか、ということになります。
法務部の言うことはブレーキばかり?
ときに、法務部はいつもブレーキを踏む、もう少しビジネスチャンスのことも考えて欲しいという言葉を聞きます。法的リスクばかりを伝えて抑制的な見解ばかりを言われていれば、そのように感じるのも無理はないかもしれません。しかし、本来あるべき弁護士のアドバイスは、法的リスクの大小、発生確率の代償、ビジネスへの影響、回避策の有無等を含めてのものです。つまり、経営者が意思決定するための前提情報なのです。なので、私自身は、弁護士のアドバイスは、ブレーキではなく、アクセルの踏み方を提案するものだと考えています。
予防法務に取り組みましょう
前述したように、予防法務に取り組むには、顧問弁護士を依頼するのが一番です。どのような顧問弁護士がよいのか、知り合いの紹介やインターネット等を通じて、探してみられるとよいと思います。御社にとって、一番あう弁護士が見つかることを願っております。