債権回収をあきらめない
判決は紙切れ!?
日本の裁判では、判決を得ただけでは解決しません。もちろん、相手が進んで支払ってくれればよいのですが、判決を得ても、相手が任意に支払わないことが多くあります。その場合、次の段階、つまり強制執行が必要になることが多いです。
この場合、どうやって相手の財産を差し押さえるか。実は、裁判所は差し押さえる財産を指定しないと動いてくれません。「何でもいいから押さえてくれ!」と言っても動いてはくれないのです。債権執行、不動産執行、動産執行など、様々な書類があります。
債権執行が最も有効
もっとも有効な方法が債権執行です。相手が誰かに対して持っている債権を押さえるわけですね。たとえば、相手が会社に勤めているのであれば、給料債権を差し押さえる。保険契約をしていれば、解約返戻金を差し押さえる。事業をしている人であれば、取引先に対する債権を差し押さえる。銀行口座があれば、その口座を差押える。このように様々なことが考えられます。
そのため、相手の情報をよく知っておくことが重要です。たとえば、会社同士の取引であれば、どこの銀行と取引をしているのか、どのようなところに製品を納入しているのか、など、取引を開始する前、継続中に情報を得ておくことが有効です。
動産執行もありえる
では、債権執行ができない場合はどうか。
動産執行という手段もあります。これは、その人の持つ動産を押さえるというものです。その人の家に行き、換金可能なものを差し押さえるのです。もちろん、差し押さえが禁止されているものもあるので、それ以外のものを探さねばなりません。
差押禁止財産の例
・債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
・債務者等の1月間の生活に必要な食料及び燃料
・現金66万円まで
・債務者の職業に応じて、その業務に欠くことのできない器具その他の物
・実印その他の印で職業又は生活に必要なもの
・仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に必要な物
・債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿など
・債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
・債務者等の学校等における学習に必要な書類及び器具
・発明又は著作に係る物で、未公表のもの
・債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
・建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品
結構たくさんあるということがわかると思います。
しかし、動産執行の目的にもう一つあります。それは、立ち会った人からの情報収集です。現場に行き、その場にいる家族の方などから情報収集をするのです。そこから意外な財産が明らかになる場合もあります。
ですので、債権回収はとにかくあきらめない。粘り強くすることが重要です。
小倉悠治(弁護士:金沢弁護士会所属)