有給休暇の取得義務化
有給休暇とは?
正式には、年次有給休暇と言いますが、労働者の休暇日のうち、会社から賃金が支払われる休暇日のことです。1年ごとに全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、毎年一定の日数が与えられます。有給休暇の制度は法律で定められているものなので、会社において有給休暇の制度を特に定めていなくても、請求があれば与えなければなりません。
有給の日数は?
雇い入れの日から起算して6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者には、年10日の有給休暇が付与され、年々増加していきます。なお、残業代が発生しない管理監督者も年次有給休暇の対象ですので、ご注意下さい。
パートタイム労働者など所定労働日数が少ない労働者については、所定労働日数に応じた日数の有給休暇が比例付与されることとなります。なお、比例付与の対象となるのは、所定労働時間が週30時間未満で、かつ、週所定労働日数が4日以下または年間の所定労働日数が216日以下の労働者です。
有給休暇の指定義務化
今回、労働法が70年ぶりに改正され、有給休暇の取得が義務づけされました。その点について、お伝えしたいと思います。
対象者
有給休暇が10日以上付与されている労働者が対象です。会社の独自のルールで10日以上になっていても、法定の日数が10日以上でなければ、義務ではありません。
どんな義務があるのか?
労働者ごとに、有給休暇を付与した日から1年以内に5日について、取得の時季を指定して、有給休暇を取得させなければなりません。半日の取得でも0.5としてカウントできますが、半日未満の単位では、義務化される5日にカウントできませんので、ご注意下さい。さらに前年からの繰り越しがある場合、繰り越し分でも、新しく付与された分でも、、合計で5日に達していれば問題はありません。
そして、この際、労働者の意見を聴取し、尊重しなければならないとされています。もちろん、「尊重」ですから、労働者の意見に従わなければならないわけではなく、会社全体の状況を見ながら、決めることができます。
一方、すでに労働者が5日以上の年次有給休暇を請求していたり、取得している場合には、時季を指定する必要はありません。
年次有給休暇管理簿
会社は、労働者ごとに有給休暇の管理簿を作成し、3年間保存しなければならないとされています。どんな書式がいいのかについては、「時季、日数、基準日を労働者ごとに明らかにした書類」であればよいので、たとえばクラウドシステムでも構いませんし、独自に書類を作っても大丈夫です。
就業規則への規定
休暇に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項(必ず書かねばならない事項)なので、時季指定の対象となる労働者の範囲と時季指定の方法について、就業規則に記載をしなければなりません。すでに就業規則がある会社については、就業規則を改正する必要があります。なお、厚生労働省のリーフレットにも改正案が書かれていますが、改正されるのであれば、有給休暇についてしっかりと規定をしておくことをお勧めいたします。たとえば、有給休暇の使用順序を古いものからにするのか、新しいものからにするのか、会社と労働者の意見が異なっていた場合にどういう取り扱いをするのか、これらについては、就業規則にあらかじめ定めておいた方が、後のトラブルを避けることができます。
罰則
仮に、年5日の有給休暇を取得させなかった場合、30万円以下の罰金が定められています(労働基準法120条)。
以上のように、罰則まで規定されていることから、各会社において、しっかりと対策を立てることが重要です。日頃から有休休暇が取得されている企業ならば特に問題はないでしょうが、ほとんどの社員が取得していないといったような場合は、夏季や年末年始の計画的に付与して大型連休とするなど、計画年休などを導入することも検討していただくとよいかと思います。
また、有給休暇をしっかりと取得してもらうことは、従業員満足度の向上にも役立ちます。労働時間が減ると考えるよりは、従業員のモチベーションアップ、生産性向上の好機と捉えて、対策をしていただけるとよいでしょう。