仮差押えを有効に使う!
債権回収にはいくつかの方法がありますが、私がしばしば提案するのが「仮差押え」です。「仮」と名がついていることからおわかりかと思いますが、本式の裁判とは異なり、比較的簡単な手続きでスピーディに差押えを行うことができます。ただ、あくまでも「仮」なので、担保をつまねばならないことや、最終的な満足を得るためには本裁判をせねばならないなどのデメリットもあります。
仮差押の手続きの流れ
仮差押は、裁判所が決定するものです。裁判所に対しては、「保全すべき権利の存在」と「保全の必要性」を資料に基づいて説明する必要があります。そのため、仮差押えの申立書を作成して、資料(契約書、請求書など)を添付し、裁判所に提出する必要があります。基本的に、裁判所は提出された書面で審査するのですが、一部の裁判所では、審尋(債権者またはその代理人と裁判官との面談)が開かれます。ただ、審理をしている間、相手方に連絡がいってしまうということはないですし、相手方に対して審尋が行われることもありません。
無事に裁判所から決定が出されると、次にせねばならないのが、保証金の供託です。仮差押は、債権者側の主張だけで、相手方が自由に財産を処理できないようにするものであって、あくまでも「仮」なのです。もちろん、後の裁判でしっかりと勝訴判決が出ればいいのですが、敗訴判決になったりした場合、相手方はその間に自分の財産を自由に処理できなかったという不利益を受けたということになります。その不利益に対する損害賠償金が速やかに支払われるよう、あらかじめ一定額を保証金として法務局に預けておくということなのです。
保証金の相場は、相手の財産の種類によって異なりますが、差押えする財産の2~3割程度と言われています。
債権回収における仮差押のメリットとデメリット
仮差押のメリットは、「迅速」ということです。基本的に書面審査ですので、裁判に比べればはるかに早いスピードで決定が出されます。
そして、重要なのが「相手に対する影響が大きい」ということです。仮差押によって相手は財産を自由に処分できなくなると、資金繰りに窮する、もしくは融資を受けられなくなるなど、相当なダメージを与えることになり、慌てて支払ってくるということも多くあります。つまり、本裁判の前に、交渉によって相手方から債権を回収できるケースも多くあるのです。
一方、仮差押のデメリットとしては、やはり保証金を供託する必要があるということです。
以上のようなメリットとデメリットを比較して、仮差押えはここぞという時に使いたい制度です。
債権回収には迅速性と交渉力が必要です。是非、債権回収に強い顧問弁護士を見つけ、依頼をしておくことをお勧めいたします。