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録音データは証拠になるか

録音データは証拠になるか

最近、労働関係の訴訟において、従業員が経営陣とのやりとりを録音したデータを証拠として提出することが多くなってきています。そこで問題になるのが、「相手に無断で録音したデータは証拠として認められるのか」ということです。スマホを持つことが当たり前になった昨今、録音は極めて簡単にできますので、いつでもどこでも録音の可能性がありますので、気になるところかと思います。

秘密録音の問題点

会話をしている相手の同意や了解を得ずにその会話を録音することを「秘密録音」と言われます。将来のトラブルや交渉に備えて証拠化するために行われることが多いです。前述したとおり、最近ではスマホの普及から、従業員が秘密録音をして裁判に証拠として提出することが多くなっています。特に、パワハラやセクハラの事案では、何を言ったのかが残っていなければ、水掛け論になってしまうことも多く、それを防ぐために有効な手段だと思われているわけです。

秘密録音は適法か

このような秘密録音は適法なのでしょうか。相手の了解を得ていないわけですから、相手にとっては不意打ちのように感じます。プライバシー侵害に当たらないかという問題もあります。この点に関する裁判例として、秘密録音は「通常話者の一般的人格権の侵害」となりうるものとし、「著しく反社会的な手段を用いて」取られたものでない限り、証拠能力は認められる(証拠として適法)と判断した裁判がありました(東京高裁昭和52年7月15日)。
☆銀座の料亭での会話をふすま越しに録音したテープを証拠として認めた裁判例です。

つまり、秘密録音自体は不法行為にはなり得ても、訴訟での証拠としては原則問題ないということです。

ただ、どんな録音についてもOKということではありません。この裁判例でも、「著しく反社会的」な手段で収集した場合については、証拠能力を否定される可能性があります。

否定例

証拠能力を否定された例として、こんなものがありました。すなわち、パワハラ問題を審議する委員会の会議で、自身を侮辱し名誉を毀損する発言があったなどとして、私立大学の男性職員が勤務する大学を訴えていた裁判がありました(東京高裁平成28年5月19日)。

録音データはパワハラ問題を審議する委員会の会議中のものとみられ、男性を侮辱する発言が含まれていました。

ところが、裁判所は、会議の内容は秘密にする必要性が特に高く、録音データの違法性は極めて高いとしました。会議においては、当事者の個人情報等、知られたくない情報が盛んにやりとりされることが容易に想定できます。もし、録音データを証拠として認めてしまうと、違法行為を助長てしまうことにもなりかねません。このような理由で証拠として採用することはなかったようです。

会社側としてどうするか

会社側としては、いつ録音されてもおかしくないという立場で対応することが重要です。指導する場合でも、録音されている可能性を念頭に置き、決して感情的にならずに対応することが重要です。

指導する際の注意点

感情的に叱責したり、強い言葉で叱責することで、人が動くことはないと考えていただくのが一番です。人は正しいから動くのではなく、信頼している人から言われるから動くのです。いたずらに感情的になっていては、人の心は離れていくばかりです。如何にして指導するか。常に研究工夫することが重要です。

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