支払督促のメリット・デメリット
債権回収の一つの手段として支払督促というものがあります。ごくごく簡単に言うと、最もライトで簡潔な裁判です。
支払督促のメリット
支払督促のメリットは、「簡単」な手続きでできるということです。裁判所に所定の書面を提出すると、裁判所が簡単な書類審査だけで、相手に対して支払いの命令を出してくれるのです。
通常の裁判では、裁判所に行き、証拠を提出し、尋問を行うといった大変煩雑な手続きをせねばなりませんが、支払督促はそれが必要ないのです。郵送で手続きを行うことも可能なので、一度も裁判所に行かずに行うこともできます。そして、裁判所に納付する収入印紙も、普通の裁判の約半分です。
簡易に、迅速に、安く、支払い命令を得ることができ、強制執行もできる。これが支払督促の最大のメリットです。
ここまで聞くと、素晴らしい制度のように思われるかもしれません。しかし、実はたくさんのデメリットがあります。
支払督促のデメリット
相手から異議の申し出がなされると通常の訴訟に移行してしまう
支払督促では、相手の意見を聞くことなく支払い命令が出されます。相手に反論の機会を与えていないことから、異議を申し出れば、無効となり、通常の裁判に自動的に移行することになってしまうのです。しかも、この異議申し出には理由もいらず、裁判所から届いた書類の中にある書式を使って、書面を一通出すだけなので、これまた簡単な手続きなのです。したがって、この異議が出る可能性は非常に高いわけです。そのため、支払督促に対しては異議を出すのがむしろ通常といってもいいかもしれません。
そして、通常の裁判に移行すれば、しっかりとした書面も出さねばなりませんし、証拠も出さねばなりません。尋問もあるため、かなり大変です。
かえって時間がかかってしまうことも
このように、通常の訴訟に移行してしまった場合、最初から裁判を起こすよりかえって時間がかかってしまうことがあります。異議申し出の期間も2週間ありますし、支払督促を送る日数もかかりますので、その分、裁判も遅れてしまうのです。
裁判所の管轄の問題
最後に、支払督促の管轄は、相手の住所地を管轄する裁判所です。つまり、相手の住む場所に近い裁判所に訴えねばならないのです。民事訴訟法では特別な管轄がいくつか定められているので、できる限り自分の会社に近い裁判所で裁判を行うのが普通なのですが、それができないのです。交通費を使い、時間を使い、裁判をせねばならないと思うと、大変な費用がかかると言えます。
使う場合は弁護士と相談を
したがって、支払督促をするかどうかは慎重に考える必要があります。弁護士によく相談した上で、やるかどうかを決めていただくのがよいと思います。