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学歴詐称が発覚~解雇できるか?

学歴詐称が発覚~解雇できるか?

「雇用した従業員の学歴について、詐称があることがわかった。解雇できますか?」

こんな質問を受けることがあります。そこで、今回は、従業員が入社前に提出した履歴書で経歴詐称をしていた場合に解雇できるかという観点からお話ししたいと思います。

結論から言いますと、解雇ができる場合もあれば、解雇ができない場合もあります。つまり、「学歴詐称がある」というだけで解雇できるわけではないのです。

なぜかと言えば、一口に学歴詐称・経歴詐称と言っても、程度の大きいものから小さいものまで、様々だからです。解雇が許されるかどうかについては、使用者と労働者の間の「高度な信頼関係」を破壊するか否かという観点から判断されます。

たとえば、仕事をしていくのにそもそも支障があるような重大な経歴詐称であれば、解雇が認められますし、支障がない程度のささいな学歴詐称であれば、解雇を有効とはできません。抽象的なことを話していてもなかなかわからないと思いますので、少し過去の裁判を見てみたいと思います。

学歴の詐称

学歴詐称について、高卒者のみを採用するとしていた会社に、大学中退者が高卒と偽って入社したという事案において、大阪地方裁判所は試用期間での解雇が有効としました(大阪地方裁判所昭和50年10月31日決定)。逆に、同様の事案で、解雇を無効とした裁判例もあります(名古屋高等裁判所昭和55年12月4日決定)。

両方とも仮処分に対する決定ですが、判断の分かれ目のポイントは求人の条件として重視されていたかどうか、明示されていたかどうかです。求人の条件として明示され、重視されていればされているほど、その部分の詐称は解雇有効に傾きます。

職務経歴の詐称

職務経歴の詐称については、JAVA言語のプログラミング能力があるという前提で採用したのに、実は能力がなかった(あるかのように偽っていた)という事例で、懲戒解雇を認めています。

いずれにしても、経歴詐称の事実を知っていたら雇わなかったと言えるくらいの重大な経歴詐称がないと解雇できないと考えておくべきです。ただ、経歴詐称の場合、入社後、時間が経過して何ら問題なく勤務しているということであれば、解雇はできなくなっていくので、注意が必要です。これは、いくら詐称があったとしても、問題なく労働に従事できたことによって、詐称による信頼関係の破壊の程度がそれほどでもないと考えられるためです(もちろん、資格の有無などは別ですが)。

ですから、まずは重要な経歴については卒業証明書を提出させたり、資格の証明書を提出させるなど、根拠資料の提示を求めることが重要です。また、経歴詐称が発覚したから即解雇!とするのではなく、解雇が可能かどうかを慎重に検討することが必要です。その前提として、弁護士に事前に相談をしておくことが重要です。

解雇の可否の先で大事なことは

もう一つ重要なことは、解雇ができないからと言って放置するよりは、これがよい機会ですから、しっかりと話を聴くとよいと思います。もちろん、事実を偽ることは信頼関係を破壊することになることは、しっかりと伝えねばなりません(どのように伝えるかは慎重さが必要です。他の人から同じことをされたらどう思うかといった視点の移動も大切です)。ただ、学歴詐称、経歴詐称をしてしまうということは、何か理由があるはずです。学歴詐称であれば、何らかのコンプレックスがあるのかもしれません。過去に学歴で差別を受けたりしたことがあるのかもしれません。そうであれば、学歴を重視しているわけではなく、人間性が大事であることを伝えるということもできるでしょう。はたまた経歴詐称であれば自分には能力があるのに、経歴が悪いからうまくいっていないという思いがあるのかもしれません。これもまたそのことをきっかけにいろいろなお話ができるはずです。

いずれにせよ、詐称をした理由を聞き、受け入れ、それも認めた上で関わることができれば、それもまた人材育成の一つのきっかけにすることができるということを知っていただきたいと思うのです。

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