契約書を公正証書にするメリットとデメリット
契約書、公正証書で作った方がよいですよね?
最近、こんな質問を受けることが多くなってきました。公正証書。弁護士にとってはなじみの深いものですが、昔はあまり公正証書など知っている人は多くなかったと思います。インターネットが普及し、様々な情報が簡単に得られるため、公正証書のことを知っている人が増えているのだと思います。一方で、公正証書のメリットとデメリットをあまり知らないでただ漠然と「公正証書の方がいい」と思っている方が多いようにも思います。そこで、今回は公正証書のメリットとデメリットをお伝えしたいと思います。
まず、公正証書は、全国各地にある公証役場において作成してもらう書面です(石川県であれば、金沢と小松と七尾)。公証人は、裁判官や検察官を退任した人がなることが多いですので、法律実務に詳しい人です。
メリット
公正証書にはいくつかのメリットがあります。
1 高い証拠力がある
契約書を当事者同士で作成した場合、「こんな書類見たことがない」、「偽造だ」、「これはこんな趣旨で作ったのではない」といった争いが起こりえます。相談を受けていても、「署名は私のもののようだが、こんな書類知らない」と言われる方が多いように思います。
しかし、公正証書はしっかりとした手続きのもとに作成されますし、公証人の面前で読み上げられ、意思確認もしっかりとされます。そのような手続きを経ていることから、証拠の力は強いと言えます。仮に裁判所等で争われても、しっかりとした証拠として扱われます。それだけ、後の争いを避けることができます。
2 判決と同じ力がある
たとえば借用書や金銭消費貸借契約書を当事者間で作成して、相手がお金を返さなかった場合、裁判をしなければ、強制的に財産を差し押さえることはできません。裁判だけでも1年以上の時間がかかってしまうことが多いです。もちろん、その間、財産隠しをしないように保全の手続きを取ることや、支払督促などの簡易迅速な裁判手続きもありますが、相手が争ってきた場合などは、時間がかかるのはどうしようもないのです。
一方、公正証書に「執行認諾文言(しっこうにんだくもんごん)」というものをつけておけば、判決と同じ力があり、わざわざ裁判せずとも、差し押さえをすることができるのです。これは大きなメリットと言えますし、私が公正証書の作成をお勧めするのもこのメリットを重視してのことが多いです。
3 安全である(紛失の危険性が低い)
当事者同士で契約書を作成した場合、専門家に相談していないと、法律に違反した内容になってしまうこともあります。しかし、公正証書を作成する場合は、公証人が内容が法律等に違反していないかを事前にチェックします。そのため、作成された公正証書が法律に違反しているということはほとんどありません。
また、公正証書は、原本(契約書そのもの)を公証役場で原則20年間保管します。そのため、公正証書の控えを紛失した場合でも、その写しをいつでも再発行してくれます。その意味で、安全と言えます。
デメリット
いくつかデメリットがありますが、主なものを紹介したいと思います。
1 手続きが煩雑である
公正証書は面前で確認する必要があることから、原則として公証人役場に足を運ぶ必要があります。もちろん、委任状で対応することも可能ですが、代理人を手配する必要があります。また、本人確認書類等の必要な書類が多く、それだけ煩雑です。
2 作成手数料がかかる
公正証書の作成手数料は、目的とする財産の価額に応じて、次のとおり定められています。
・100万円以下 5000円
・100万円を超え200万円以下 7000円
・200万円を超え500万円以下 11000円
・500万円を超え1000万円以下 17000円
・1000万円を超え3000万円以下 23000円
・3000万円を超え5000万円以下 29000円
・5000万円を超え1億円以下 43000円
詳しくは、日本公証人連合会のHPに記載されていますので、わからない場合はチェックしてみられるとよいと思います。
弁護士に相談を
ここまで公正証書のメリットとデメリットをお伝えしました。個々の事例において、公正証書を作った方がよいのかどうか、これは専門家でないと判断できません。トラブルを予測し、未然の防止できるのが弁護士の特徴です。気軽に弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。