不動産売買契約の注意点
不動産の売買契約は、不動産業者であれば頻繁に締結しますが、通常の企業ではあまり経験がないことかと思います。ただ、不動産売買契約の場合、売買代金が高額になるのが通常ですので、契約書はしっかりとチェックすることが必要です。
不動産売買契約書でチェックすべき注意点
1 売買物件の表示
売買契約書には、購入予定の物件の情報が記載されます。その際、地番や面積など、間違いがないかどうかをしっかりとチェックしましょう。特に、どこまでが売買の範囲なのかをしっかりと確認しておかないと、「ここも入っていたと思っていた」では済みません。また、実際の面積と登記簿上の面積等とが異なる場合にどうするのかについてもチェックしておきたいものです(仮に実際の面積が公簿より少なくても減額しないとすることが多いかと思いますが、しっかりと協議しておく必要があります)。
2 売買代金、支払日
売買代金、手付金などの金額、支払日もチェックが必要です。売買代金に間違いがないか、手付金の金額は妥当か(売買代金の10%程度のことが多いです)、支払期日に間違いないかなどを確認するようにしましょう。もし、融資を利用する場合には、融資が通らなかった場合にどうするのかなどについてもチェックが必要です。
3 所有権の移転と引渡し時期
一般的には、代金を全額支払った日に所有権の移転と物件の引渡し(登記手続きも)を同時に行います。代金支払いを先行させてしまうと、いつまでも登記を移転してくれないなどのこともあり得ます。相手の義務とこちらの義務は同時になされるようにしておくべきです。
物件に抵当権がついている場合などもありますので、売買代金の支払いと必要書類の受領を同時に行うようにしましょう。
4 付帯設備等の引渡し
建物に付属している設備を引き継ぐ際に、トラブルを避けるには、どの設備を引き継いでどの設備を撤去するのかを契約前に明確にしておく必要があります。また、引き継ぐ付帯設備については、不具合がないか、どんな状態か、不具合があった場合にどうするのかも事前に確認する必要があります。
5 契約違反による解除
契約条項のうち重大な事項に違反した場合に、契約を解除することができますが、その他、どのような場合に解除することができるのかを定めることができます。
また、違約金の金額をあらかじめ定めておくことができます。何があるかわからないのが不動産売買です。違約金を定めておけば、契約自体はより強いものになりますので、念のためという意味も込めて、設定しておいた方がよいです。
6 瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、物件に隠れた瑕疵・欠陥などが見つかった場合に、売主が負う修理責任のことを言います。修理の請求やそれに代わる損害賠償請求をすることができます。また、瑕疵により購入する目的を達成できない場合、契約を解除することができます。
この瑕疵担保責任ですが、一般的には、買主が瑕疵を知った時から1年以内という期間制限が設けられていることが多いです。ただ、中古物件などの場合、瑕疵担保責任は負わないという取り決めをすることが多いです。このような場合、仮に購入直後に雨漏りがするなどの瑕疵があっても、それに対する修繕や代金の減額などができなくなってしまいます。もし、瑕疵担保責任を負わせないということであれば、しっかりと物件をチェックして、後からは何も言えなくなってしまうということをよくわかっておく必要があります。
弁護士に相談を
いずれにせよ、不動産売買契約は、金額が大きい契約の場合が多いです。一生に一回するかどうかという方も多いはずです。そんな時だからこそ、弁護士への相談をお勧めいたします。弁護士に事前に相談し、契約書の注意点を聞いておくだけでも、安心して契約をすることができます。
どうしても、不動産業者は専門なのだから、大丈夫だろうと思ってしまう人も多いかと思います。契約と言うのは、一度結んでしまえば後から変更することはできません。事後対応ではなく、事前対応。いつでも相談できる弁護士を知っておくことが重要です。
弁護士 小倉悠治(金沢弁護士会)