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退社時の誓約書の重要性

退社時の誓約書の重要性

新聞を見ていましたら、退職代行サービスの記事が載っていました。最近ちらほらと聞く方になったサービスではあります。ただ、もし退職の際の交渉を行うとすれば、それは弁護士しかできないことで、一般企業が行った場合は違法です。もし心配な方は、遠慮なくご相談下さい。

退社時の誓約書

さて、退職に際し、会社側でも気をつけなくてはならないことがあります。それが誓約書の取得です。退職の際、会社の立場で気になることは、会社を辞めた後でノウハウが流出してしまったり、秘密事項が漏れてしまうことです。一般常識で言えば、そんなことをするはずはないと思われるでしょうが、世の中には様々な考え方の人がいますので、難しいものです。
退職した従業員が会社の秘密をもらさないようにする方法としては、退職する従業員に対して、退職後も競業避止義務(同じ業種の仕事をしない)、秘密保持義務を負わせるということが考えられます。そのために、退職時に誓約書を差し入れてもらったり、退職合意書を作成し、競業避止義務と秘密保持義務を明記しておくのです。ただ、円満な退社であればそれができるのですが、少々もめてしまった場合、誓約書の提出や退職合意書の提出を拒まれてしまうこともあります。

入社時にも誓約書を

これを防ぐための方法として、入社時に誓約書を受け取ることや、就業規則に定めておくことが考えられます。ただ、これも一歩間違えると、誓約書が無効になってしまうことがあります。それは、秘密保持義務の対象があまりにも広すぎる場合です。この場合、必要性・合理性の観点から公序良俗に反し無効(民法90条)とされる可能性があるのです。ですので、秘密情報の範囲から、公に知らされている情報や第三者から秘密保持義務を負わされることなく取得したものを除く等、秘密情報の範囲を狭めておくことが必要になります。

たとえば、以下の裁判例が参考になります。ダイオーズサービシーズ事件(東京地裁平成14年8月30日判決)では、「就業期間中は勿論のこと、事情があって貴社を退職した後にも、貴社の業務に関わる重要な機密事項、特に顧客の名簿及び取引内容に関わる事項並びに製品の製造過程、価格等に関わる事項については一切他に漏らさないこと」という誓約書の言葉が問題になった。結果として上記程度限定されていれば無効にはならないという判断でした。

ただ、あまり広い秘密保持義務を課すことは、従業員が会社を辞めた後の職業選択の自由や営業の自由に制限を加える可能性があるので、退職後の元従業員の在職中の地位・担当業務、秘密への関与度、当該秘密の事業運営上の重要性等を勘案しつつ決められることになります。少し難しい内容になってしまいましたが、いずれにせよ、誓約書一つ作るにしても、専門家のチェックを受けておかれた方が安全ではないかと思います。

競業避止義務の有効性

労働契約法3条4項には以下のように定められています。

(労働契約の原則)

労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」

このことから、労働者が競業行為を控える義務があるとされています。このため、労働者が競業行為を行えば、懲戒処分や損害賠償請求の対象になり、場合によっては解雇事由にもなり得ます。

このように、在職中の労働者においては、法的根拠が明確であるため、競業避止義務が問題になることはまずありません。しかし、退職後の競業避止義務を課すことについては、職業選択の自由(憲法22条1項)を侵害する可能性があるため、その有効性が争われることになるのです。種々の裁判例があり、しかも個別判断なので難しい点がありますが、地域を限定し、期間を限定(1~2年程度)としておかなければ、無効となる可能性が高まるため、注意が必要です。

いずれにせよ、実際に誓約書を作成される場合は、専門家に相談されることをお勧めいたします。

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