電話番号、営業時間、住所 アクセスアイコン
電話番号、営業時間

石川県金沢市
長町1-4-45

アクセスアイコン

譲り受ける事業のネームバリューを活用する際の注意点

譲り受ける事業のネームバリューを活用する際の注意点

1 はじめに

近年、成長戦略の一環としてM&Aを活用される事業者が多くなり、事業の譲渡を受けることも珍しくありません。
一方で、必ずしも専門家の関与がないまま事業の譲受けが進んでいるケースもあるように思われ、そのような場合には、譲り受けた後で思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあります。
特に、譲り受ける会社や事業の、元々の商号や名称をそのまま使用する場合には注意が必要です。
今回は、事業譲渡の後も同一の事業名称を利用する場合のリスクと対処法についてご説明いたします。

2 事業譲渡におけるリスク

① 会社の商号の譲渡を受ける場合
飲食店事業を営む「A株式会社」からその飲食店事業とともに「A株式会社」の商号も譲り受ける場合、
譲受会社は「A株式会社」の商号だけでなく、その債務も負担しなければなりません(会社法22条1項)。
「A株式会社」の取引先からすれば、実際の母体が変わったとしても「A株式会社」は存続しているのであるから
債務を負担してほしい(あるいはそもそも変わったことにすぐには気付けない)と考えるのはある意味当然との考え方によるものです。

② 商号ではなく、事業の名称のみを引き継いだケース会社分割の事例
では、商号ではなく、「事業の名称」を引き継いだケースはどうでしょうか。
預託金会員制ゴルフクラブの運用会社から事業を譲り受けた会社が、
ゴルフ場の名称(「〇〇カントリークラブ」。会社の商号とは別のもの)を続用した場合に、
会社法22条1項を類推適用して、譲渡会社の債務が引き受けられたと判断した最高裁判例があります。
商号の引継ぎはなくとも、元々の取引先が①の場合と同じように期待するのはこの場合当然(類推適用)と裁判所が考えたためです。

3 最後に

さて、上記のケースを踏まえて、債務を回避しつつも、
引き継ぐ事業のネームバリューを活用したいと考える場合はどうしたらよいでしょうか。
実は、会社法22条2項に基づいて
免責の登記譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨の登記)を行うことによって、
商号(事業名称)の続用の責任を回避することができます。
免責登記の手続にあたっては譲渡会社の承諾書が必要ですから、譲渡の実行に際して忘れないように取得しましょう。
今回は、譲り受ける事業のネームバリューを活用する際の注意点をお伝えしました。
ご参考になりましたら幸いです。

 

本記事は、弊所配信のメルマガ「弁護士法人クオリティ・ワン 法律一口メモ」より抜粋しています。

事業承継に関するその他の記事

メルマガ登録はこちら

当事務所の最新コラム