不動産問題
不動産問題で多くトラブルになるのは、借地借家に関するトラブルです。そこで、ここでは、借地借家に関するトラブルについてごく簡単にお伝えいたします。
地代・家賃の値上げ
「新幹線開通によって近隣の相場があがったので、賃料を上げたい。」
「大家から突然賃料の値上げを要求されたが納得できない。」
このような声は多くあります。しかし、賃料(地代・家賃)の変更が認められるのは、あくまで正当な理由がある場合に限られます。具体的には以下のような事情が挙げられます。
・固定資産税等、土地や建物にかかる経費の増加があった場合
・経済事情の変動によって近隣相場を含めて物件の価値が大きく変化した場合
・近隣の同種の賃料と大きく差がある場合
ただ、賃料を勝手に増額することはできません。あくまでも最初は話し合いを行い、それでもまとまらない場合は、賃料増額請求の調停や裁判を起こすことが考えられます。ただ、調停や裁判は非常に時間のかかるものです(短くて半年、長くて2~3年)。そのため、あくまでも交渉で値上げすることが大前提となるでしょう。なぜ値上げが必要なのかということをしっかりと説明し、賃借人の理解を得て変更することが大切です。
一方、賃借人の側から言えば、賃料の値上げに納得できない場合に、賃料を支払わない賃借人がいますが、これは危険です。なぜなら、賃料を支払わずにいると、債務不履行であるとして賃貸借契約を解除されてしまうことがあるからです。これを防ぐためには、賃料を供託することが考えられます。供託している限りにおいて、賃貸借契約の解除はできません。
賃貸人、賃借人、いずれについても言えることですが、賃貸借契約は、お互いの信頼関係に基づく契約です。そのため、賃料でもめることは相当ではありません。双方が不満なくよい関係を続けることができるよう、しっかりと話し合いをすることが重要です。
更新料
「建物を他に使う必要が出てきたので、今回の契約期間満了の際に更新を拒絶したい」
「更新したいが、更新料に納得がいかない」
賃貸借契約は更新されるのが原則となっています。更新を拒絶するためには、期間満了の1年前から6ヶ月前に拒絶の通知をしなければなりません。さらに、それだけではなく、更新を拒絶することについて「正当な事由」が必要です。この正当な事由はかなり限定されますので、事前に弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。
このような更新の問題を避けるために、定期借地契約・定期借家契約を結ぶという方法があります。最近のショッピングモール等では比較的よく見られるようになってきました。ただ、賃貸人の立場を強くすれば、それだけ賃借人にとっては使いにくく、入居者は減る傾向にあります。ですので、どれだけ人気の物件か、需要の状況を見ながら決めていくことになります。
最高裁判所は、我が国においては更新料を支払うという慣習法が成立しているとは認められないと判断しています。つまり、更新料を支払うとの約束がなされない限りは、支払い義務がないということです。したがって、賃貸借契約書等に、更新料について明記し、契約の時点で十分に話し合って、更新料を設定している理由、金額を双方が理解、納得しておくことが重要です。
原状回復
賃貸借契約が終了し、建物から退去する際、原状回復義務として修繕費用等を請求されることがあります。実際には、敷金から修繕費用が差し引かれ、残金が返還されることになりますが、問題は、原状回復義務の範囲です。
借主は入居前と全く同じ状態にする必要はないのですが、貸主が過大に原状回復請求をしてくる場合もあり、トラブルになるケースが多くあります。ここでは、簡潔に原状回復義務の範囲について解説いたします。
・経年劣化
畳や壁紙の日焼けなど、時間と共に発生する汚れや傷のことです。経年劣化によるものについては、貸主が修繕義務を負担するため、原状回復義務の範囲外です。
・通常損耗
普通の方法で住んでいた場合に発生する建物の損傷や劣化のことです。これも貸主が負担するため、原状回復義務の範囲外です。
・借主の故意や過失による損害
通常損耗とは異なって、故意や過失によって建物を汚したり、傷つけた場合等のことです。これは、借主の負担であり、原状回復義務の範囲内と言えます。
つまり、経年劣化や通常損耗は含まず、特別な損耗、借り主の故意や過失による損耗が原状回復義務の範囲内ということです。
造作買取請求・建物買取請求
借主が貸主の同意を得てエアコンなどを取り付けた場合、契約終了時に時価で買い取るよう請求することができます(造作買取請求権)。ところが、一般的な賃貸借契約書では、造作買取請求権を認めない旨の特約がなされていることが多いです。
一方、建物買取請求とは、土地を借りた人が建物を建築した場合で、契約の更新がされないときに、貸主に建物の買取を請求できる権利です。